「想い出のセピア」 2015年7月15日

 ビートルズがやって来た1966年、私は高校1年生だった。同級生の都会派のT子は田舎育ちの私に色んな事を教えてくれた。読書をすること、音楽を聞くこと、自分の将来を思うこと、そして、もちろん遊びも。「スケートに行こ。」と誘われ、生まれて初めて桜ノ宮にあったスケートリンクに行った。なんとか氷の上に立ち、手をつないだときはドキドキした。一緒によく歩いたけれど、行く先はいつも彼女まかせ。今思えば私はいつも彼女の真横ではなく、数cm後ろを歩いていたように思う。喫茶店という所に初めて入ったのも彼女とだった。
 夏休みには当時天王寺にあった大きな民営のプールに連れて行かれた。黄色いノースリーブのミニのワンピースから真白の水着に着替えた彼女、眩しすぎてまともには見ることが出来なかった。
 12月になると「第九を聞きに行くから付いてきて。」と言われ、これも初めてのフェスティバルホールに行った。
 2年生の修学旅行で「写真撮って。」と言われ、汗でファインダーが滲んでいたけれど必死になってシャッターを切り続けた。フィルム現像を失敗するのが嫌で、そのフィルムだけは近所の写真屋さんに現像してもらった。学校の暗室でプリント、現像液の中から浮かび上がる笑顔は私を見つめてくれていた。
 3年生になってやっと私のほうから声をかけることが出来るようになった。「写真、撮らして。」そして卒業、色んなことがあったけれど、そんな彼女が二十歳で突然逝ってしまった。お葬式に行く勇気がなかった。私のアルバムに貼ってあるコントラストが低く、けっして良いとは言えないプリント。その中に、今もあの時の彼女が微笑んでいる。
 「想い出のセピア」、私だけの最高傑作。
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by jackal-t1y4 | 2015-07-15 00:02 | その他 | Comments(2)
Commented by halma sho at 2015-07-15 17:31 x
いい話ですね。二十歳で逝ってしまったなんて!
Commented by jackal-t1y4 at 2015-07-16 01:04
一枚の写真が全てを思い出させてくれます。